高齢化社会を迎え、介護サービスや介護に対する関心が高まっています。介護が必要になる病気やケガについては転倒による骨折、認知症、脳卒中であることがほとんどです。ここでは介護や介護保険、介護のきっかけとなってしまう怪我や病気についてと、介護保険についてご紹介します。
介護保険
介護保険制度は、高齢者や障害者などの日常生活に支援が必要な人々が、支援を受けられるようにするための制度で、2000年に施行されました。
要介護度に応じて介護サービスを提供し、その費用の一部を公的な保険料から賄います。介護保険制度には、介護サービスや介護予防サービスなどが含まれ、介護施設での入所や通所介護、居宅での訪問介護、介護予防のための日常生活支援などがあります。
介護保険制度は、高齢化社会や介護需要の増加に対応するために設けられ、運営は自治体が行い、介護保険料やサービスの利用についての申請なども自治体で行われています。
介護保険制度
介護保険制度には、主に以下の3つの種類があります:
介護サービス
介護保険制度に基づき、要介護度の認定を受けた高齢者や障害者に対して提供されるサービスです。具体的には、介護施設での入所介護や通所介護、居宅での訪問介護、介護予防のための日常生活支援などが含まれます。
介護給付
介護サービスの提供に伴う費用の一部を補助する給付金です。利用者が介護サービスを利用する際に、介護サービス提供者に支払う費用の一部が介護給付金として支給されます。
介護予防サービス
要支援1や要支援2の認定を受けた高齢者や、特定の条件を満たす高齢者に対して提供されるサービスです。健康や機能の維持・向上を目的として、居宅での健康チェックや健康相談、リハビリテーションなどが提供されます。
要介護度
要介護度は、高齢者や障害者の日常生活における支援や介護の必要性を評価する指標のことで、介護が必要な状態の程度に応じて以下の7段階に分類されています。
- 要介護1から要介護5までの5段階
- 要介護度のない状態である自立した状態(自立)
- 要介護度を評価するための対象でない状態である要支援1
- 要支援2
要介護1
・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。
・排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。
・混乱や理解低下がみられることがある。
要介護2
・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話の全般に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とする。
・排泄や食事に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがある。
・混乱や理解低下がみられることがある。
要介護3
・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話が自分ひとりでできない。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。
・歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分でできないことがある。
・排泄が自分ひとりでできない。
・いくつかの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護4
・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話がほとんどできない。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。
・歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりではできない。
・排泄がほとんどできない。
・多くの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
要介護5
・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話ができない。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作ができない。
・歩行や両足での立位保持などの移動の動作ができない。
・排泄や食事ができない。
・多くの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
上記の評価に基づいて、利用者に適切な介護サービスや支援が提供されます。要介護度の評価は、介護支援専門員やケアマネージャーなどが行います。
介護が必要な人
高齢者で介護が必要な人の条件は、個々の状況やニーズによって異なりますが、一般的な条件は以下の通りです:
身体的な要介護度の高さ
身体機能の低下や病気、障害などにより、日常生活の動作が困難で、介護や支援が必要な状態にあることが挙げられます。具体的には、自立した移動や食事、入浴、排泄などの日常生活動作が困難な場合があります。
認知機能の低下
認知症や記憶障害などにより、日常生活の判断力や記憶力が低下しており、支援や監督が必要な状態にあることがあります。例えば、外出時の迷子になる可能性がある、火災や事故を起こす危険性があるなどが該当します。
孤独や社会的孤立
家族や地域社会のサポートがないため、日常生活の支援やコミュニケーションを必要としている場合があります。特に、配偶者や親族が亡くなった後など、孤独感が強まることがあります。
身体的な疾患や病気
高齢に伴う慢性疾患や急性疾患、複数の病気を抱えている場合、日常生活の自立が難しくなることがあります。
要介護になってしまう主なきっかけ
要介護になってしまう要因の多くは以下の3つになります。
よく注意して生活をするようにしましょう
転倒による骨折
転倒による骨折は介護が必要になってしまうようになるきっかけとして多くの割合を占めています。骨折の療養中に動くことがなくなり筋力が低下し、生活の質が下がってしまうのが大きな要因です。
転倒による骨折の予防は、高齢者の健康と生活の質を向上させるために非常に重要です。以下に、要介護にならないようにするための具体的な対策をいくつかご紹介します。
適切な運動と筋力トレーニング
高齢者にとって、バランスや筋力の維持が転倒予防に重要です。ウォーキング、タイチ、バランスボールなどの運動を取り入れることで、体力を維持し、転倒リスクを減らすことができます。
家庭内の安全対策
家の中での転倒を防ぐために、滑りにくい床や敷物、手すりの設置などの安全対策を行います。また、家具の配置や部屋の照明を工夫して、障害物を減らし、見通しを良くすることも重要です。
薬物管理
薬物の副作用や相互作用によって転倒リスクが高まることがあります。定期的な薬物のチェックや、医師との相談を通じて、適切な薬物管理を行います。
定期的な視力と聴力のチェック
視力や聴力の低下は転倒の原因になることがあります。定期的な視力検査や聴力検査を受けて、必要な補助具を使用することが重要です。
バランスの練習
バランスを改善するためのエクササイズやフィジカルセラピーを行います。足首の柔軟性や筋力を高めることで、転倒リスクを減らすことができます。
定期的な健康チェック
高齢者は定期的な健康チェックを受けることで、潜在的な健康リスクや問題を早期に発見し、適切な対策を取ることができます。
認知症、認知能力の低下
認知症は脳の機能が障害される疾患です。認知機能の低下や記憶力の障害などの認知症の進行によって、患者の日常生活における機能が徐々に低下し、「日常生活の自立」、「安全管理」、「医療管理」などが困難になり、社会的孤立のリスクがあることなどから要介護状態になることがあります。
認知症の予防には、生活習慣や日常の行動に気を配ることが重要です。認知症を予防するための具体的な方法をいくつかご紹介します。
- 健康な食生活: バランスの取れた食事を心掛け、野菜や果物、魚、健康な脂肪を含む食品を摂取します。食事制限や糖分の摂取量を管理し、高血圧や高コレステロールなどの生活習慣病のリスクを下げます。
- 適度な運動: 身体を動かすことは脳の健康にも良い影響を与えます。ウォーキング、水泳、ストレッチなどの運動を定期的に行い、血流を良くし、認知機能を保つために役立ちます。
- 知的活動: 認知症の予防には、脳を刺激する知的な活動も重要です。読書、パズル、クロスワード、学習など、脳を使う活動を積極的に行います。
- 十分な睡眠: 十分な睡眠をとることは、脳のリフレッシュや記憶の定着に重要です。睡眠不足は認知機能の低下や認知症のリスクを増加させる可能性があるため、睡眠の質を高めるための環境や習慣を整えます。
- ストレス管理: 長期間のストレスは認知症のリスクを高めることがあります。ストレスを軽減するためには、リラックス法やストレス解消法を取り入れ、心身の健康を保ちます。
- 社会的活動: 社会的な交流やコミュニケーションを通じて、心の健康を保ちます。友人や家族との時間を大切にし、孤独感を軽減します。
脳卒中
脳卒中(脳梗塞や脳出血など)は、脳血管障害の一種であり、脳の血流が突然に遮断されるか、あるいは血管が破裂してしまう病気です。
脳卒中が起こると、脳細胞に酸素や栄養が供給されなくなり、その部分の脳組織が障害されることがあります。この結果、脳卒中によって要介護になってしまうことがあります。脳卒中の影響は主に以下のような内容があります。
身体機能の障害
脳卒中によって脳の特定の部分が損傷を受けると、その部分が制御していた身体の機能が低下することがあります。例えば、片麻痺や筋力の低下、感覚障害などが生じ、日常生活での動作が困難になります。
言語障害
脳卒中が発生すると、言語センターが影響を受け、言語理解や話す能力に障害が生じることがあります。これにより、コミュニケーションが困難になり、日常生活や社会参加が制限される場合があります。
認知機能の低下
脳卒中による脳損傷は、認知機能の低下を引き起こす可能性があります。注意力や記憶力、判断力の低下が生じることで、日常生活の自立が難しくなります。
感情・行動の変化
脳卒中によって脳の部分が損傷すると、感情や行動に変化が生じることがあります。不安や抑うつ、興奮や攻撃的な行動などが生じ、周囲の人々との関係が悪化することがあります。