インボイス制度とは?
インボイス制度とは「適格請求書保存方式」のことをいいます。 所定の記載要件を満たした請求書などが「適格請求書(インボイス)」と言います。少し詳しく書くと、、、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるもの。と言えますです。
具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます
インボイスの発行または保存により、消費税の仕入額控除を受けることが可能です。 インボイス制度は売り手側、買い手側双方に適用されます。
・・・と書かれていても、何のことかわかりませんよね。このインボイスとは、消費税の税率、年商1,000万以内の免税事業など、幾つかの重要なキーワードがあります。これらのキーワードを中心にインボイス制度を詳しく見てみましょう。
インボイスは、誰が気にする話?
インボイスは、事業者が仕入れなどをするときに、仕入れた内容にかかる消費税が、10%なのか、8%なのか?をしっかり区分する必要がある。これを厳格にしよう。というのが発端です。
ですので、インボイスは、仕入れや売上が出る事業者や、個人事業主の方が気にする必要がある制度です。
事業を行っていない方は気にする必要がありません。
なぜインボイス
インボイスとは?と説明されても良く分かりません。それは、なぜインボイスが必要になったのか?というそもそもの部分、インボイス制度が必要になる背景を知る必要があります。
なぜインボイスなのか?それは、消費税率が、軽減税率の8%のものと、10%の物があるからです。
インボイスそのものは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」です。この手段を伝えるために資格が必要。というのがこのインボイスの正体で、この資格の事を、「インボイス発行事業者」(適格請求書発行事業者)といいます。
仕入れを行った際に、このインボイス発行事業者が発行した請求書でない場合、仕入れにかかった消費税を、経費にできない。という制度です。
簡単に例を出すと、家を建てるのに、材料や人件費で、1000万+消費税10%で、1100万円がかかったとします。
今まで、経費として、1100万円を計上可能でした。
今後、
インボイス発行事業者の請求の場合、今まで通り1100万円の計上が可能。
インボイス発行事業者以外の請求の場合、消費税10%分の100万円の計上ができません。
これが、インボイスの正体です。
事業をしていれば仕入れは必須です。その仕入れの消費税分が計上できないと、簡単に言えば、この事業者は、消費税分を損してしまいます。
ですので、同じ内容の仕事をしてくれる。もしくは同じ品質のものを同じ値段で卸してくれる等、事業者で、片やインボイス発行事業者で、一方はインボイス非対応の事業者であった場合、インボイス非対応の事業者には、発注が出にくくなってしまう。という事が起こってきます。
ですので、インボイスは事業者であれば必須で重要な資格となっていくことが想定されます。
インボイス発行事業者登録制度
インボイス発行事業者になるにはどのような手続き、資格が必要なのかを見てみましょう。
- インボイスを交付できるのは、インボイス発行事業者に限られます。
- インボイス発行事業者となるためには、登録申請手続を行い、登録を受ける必要があります。 なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。つまり課税売上が1000万以上/年の事業者という事になっています。
年間売り上げが、1,000万以下の事業者はどうすればよいのでしょうか?次の章で触れていたいと思います。
免税事業者
なぜ、インボイス発行事業者の資格に、「年間売上1,000万円以上の事業者」という線引きがあるのでしょうか?それは年間売上1,000万以下の事業者は免税事業者といって、売り上げに含まれる消費税の納税を免除されている(免税)からです。この免税事業者はこのインボイス制度においてキーワードになる内容ですので少し覚えておくとよいと思います。
売上1,000万以下の事業者でも、「消費税課税事業者選択届出書」という書類を提出しあえて課税事業者になることも可能です。
免税事業者の登録手続き
免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中にインボイスの登録を受けることとなった場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。 なお、この経過措置の適用を受けて登録申請手続を行う場合には、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要はありません。
インボイス発行事業者になると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税の申告が必要になります。 また、インボイスの登録を受けた日から2年間の課税期間のまでは、免税事業者となることはできません。
免税事業者に戻るためには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」することで免罪事業者に戻ることが可能です。
インボイスが与える免税事業者への影響
免税事業者というのは、年間売り上げが1,000万以下の個人事業主や小規模事業者です。免税という内容は税制で決められた立派な権利です。一方免税事業者も消費者から消費税を受け取ります。この消費税は一時的に預かっている物なので、預かったまま納税しない。という事が発生している事実はあります。
この事はもともといろいろ議論がされていますが、最終的には、先ほども記載した通り免税事業者というのは、ずるでもなんでもありません。
実際に免税であることによってやりくりをしている零細企業や個人事業主の方は多くいらっしゃると思います。今回のインボイス制度はこの免税事業者を直撃します。
免税事業者が取るべき道は2つに1つです。
現状の免税事業者のままでいる
取引相手が課税事業者である場合、取引先が課税事業者の場合、免税事業者なので、適格請求書を発行できず、取引先は、仕入税額控除が受けられません。
そのため他のインボイス発行登録事業者に、仕事をとられるか、消費税に当たる分の金額を値引きするように要求される可能性があるかもしれません。
インボイス発行登録事業者となる
免税事業者が課税事業者に切り替えれば、消費税の計算や申告、納税といった作業は必要になりますが、インボイス制度の導入による影響は最小限にできます。
いずれにしても今まで通り免税事業者として100%メリットを享受するのは難しそうですので、税理士の方と相談することをお勧めします。
インボイス制度の登録申請に必要な3つのステップ
インボイス制度の登録方法を見てみましょう。大きく以下の3つのステップに分かれています。
STEP1:申請書の作成
まずは申請書をダウンロードして、必要事項を記載します。紙ではなく電子での申請も可能となっております。
申請書のダウンロードはこちら:国税庁専用サイト「申請書ダウンロード」
電子申請についてはこちら:国税庁専用サイト「電子申請のついて」
STEP2:国税庁に提出
申請書に必要事項を記載したら、国税庁に提出します。
紙で申請する場合は、管轄地域の「インボイス登録センター」に送付します。
郵送による申請手続きはこちら:国税庁専用サイト「郵送による登録申請手続」
STEP3:取引先へ通知
継続的に取引を行う取引先に対して、登録番号や交付・受領方法の連絡を行います。
このとき電子で登録通知を受領しておくと便利です。
消費税と納税
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。
課税の対象
国内の事業者の取引や、商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となります。また、外国から商品を輸入する場合も輸入のときに課税されます。
非課税取引
次のような取引は、消費税の性格や社会政策的な配慮などから非課税となっています。
- 土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く。)など
- 有価証券、支払手段の譲渡など
- 利子、保証料、保険料など
- 特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
- 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
- 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
- 外国為替など
- 社会保険医療など
- 介護保険サービス・社会福祉事業など
- お産費用など
- 埋葬料・火葬料
- 一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
- 一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費な
- 教科用図書の譲渡
- 住宅の貸付け(一時的なものを除く。)
納税義務者(課税事業者)
消費税は、消費をする人すべてが支払っていますが、直接税務署に払っているわけ柄ではないですよね?皆さんの消費税は一旦事業者にあずかられる形になります。その預かった税を事業者が納材する形になります。
事業者が納税するのは、自身の事業売り上げに対する消費税を納税するのですが、事業者も当然、仕入れや営業経費で消費税を支払っています。そのため事業者が納税する消費税は、課税売上高にかかる消費税額から課税仕入高にかかる消費税額を差し引いた額になります。
具体例を簡単に示すと以下になります。
- 課税売上高10,000円
- 課税仕入高8,000円
この場合、消費税が10%であれば課税売上高にかかる消費税額は1000円、課税仕入高にかかる消費税額は800円になります。つまり、消費税の納付税額は以下のようになります。
1,000円-800円=200円
このように、課税売上高にかかる消費税額から課税仕入高にかかる消費税額を差し引いて計算する一般課税が、基本的な消費税の計算方法になります。
簡易課税制度
簡易課税制度は、一般課税の計算が煩雑になるため、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。つまり納税の計算などが簡単になります。
課税売上高が5,000万円以下の場合、事業の区分(事業区分)に応じて一定の割合の金額を消費税額から控除することが出来る制度です。
簡易課税制度を適用するときの事業区分およびみなし仕入率は、次のとおりです。
事業区分 | みなし仕入率 |
---|---|
第1種事業(卸売業) | 90% |
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)) | 80% |
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業) | 70% |
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業) | 60% |
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)) | 50% |
第6種事業(不動産業) | 40% |
簡易課税の計算方法具体例
簡易課税は、売上の税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」をかけ、仕入れの税額計算を行う簡便的な計算方法です。消費税額の計算は、先に国税(7.8%)を求め、次に地方税(2.2%)を求めます。最後に国税と地方税を足して納付税額(10%)を求めます。
売上高1,100万円 小売業(みなし仕入率80%)の場合の消費税額
①売上にかかる消費税額
1,100万円(税込)÷110%=1,000万円(税抜)
1,000万円(税抜)×7.8%(国税)=780,000円
②仕入にかかる消費税額
780,000円×80%=624,000円
③差引税額
①(780,000円)-②(624,000円)=156,000円
④地方消費税額
③(156,000円)×22/78=44,000円
⑤納付税額
③(156,000円)+④(44,000円)=200,000円
納税額:200,000円
売上高1,100万円 小売業(みなし仕入率50%)の場合の消費税額
①売上にかかる消費税額
1,100万円(税込)÷110%=1,000万円(税抜)
1,000万円(税抜)×7.8%(国税)=780,000円
②仕入にかかる消費税額
780,000円×50%=390,000円
③差引税額
①(780,000円)-②(390,000円)=390,000円
④地方消費税額
③(390,000円)×22/78=110,000円
⑤納付税額
③(390,000円)+④(110,000円)=500,000円
納税額:500,000円
いかがでしょうか?
消費税とインボイス制度について、少しでも理解が進んだでしょうか?インボイス制度はかなり大きな制度変更になりますので、特に事業者の方は良く理解し、税理士などと相談するとよいと思います。